中古住宅の屋根について確認すべきこと
中古住宅は新築より価格が安かったり、良い立地に建っていたり、物件によってはとても魅力があります。しかし、中古住宅ならではの、必ず確認しておきたいポイントがいくつかあります。いろいろありますが、今回は屋根について解説します。
中古住宅の屋根で必ずチェックしておきたいポイントは4つあります。
- 屋根材の種類
- 屋根の形状
- 屋根の状態
- 内部からの雨漏り確認
建物、住宅にとって屋根は雨風を防ぐ大切な役割を持っています。中古住宅を購入す場合、屋根に問題があると住みだしてから雨漏りするなんてこともあります。また、屋根の劣化の状態によっては住みだしてからすぐに塗り替えなどのメンテナンスが必要になったり、場合によっては屋根材を葺き替える必要がでてくる可能性もあります。
屋根の現状がある程度わかっていれば、もし問題があっても、メンテナンス等にかかる費用の見積もりをとることもできるので、購入の判断がしやすかったり、最初から住宅ローンにメンテナンス費用を組み込むこともできます。屋根ってメンテナンスも、葺き替えもかなりのお金がかかるので、必ず確認することをおすすめします。せっかく中古住宅を安く買えたと思っても、住みだして数年で100万円単位のお金がかかるなんてとても困りますよね。
また、この記事は中古住宅の購入を検討する一般の方向けの内容となっています。屋根材の詳しい種類や性能など、専門的なことが知りたい方は、建設業者や専門業者にご確認ください。
屋根材の種類
屋根材とは、屋根に使われている材料のことです。代表的な屋根材としては、瓦、ガルバリウム鋼板、スレート、アスファルトシングルなどがあります。
屋根材を確認する意味は、屋根材によって耐久性、耐用年数、メンテナンスの頻度や費用が変わってくるからです。全てではありませんが、ここでは中古住宅で利用されていることが多い屋根材について紹介します。
- スレート
- アスファルトシングル
- 金属屋根
- 陶器瓦(いぶし瓦含む)
- セメント瓦
一般的に耐用年数が長く、あまりメンテナンスの必要がないのは陶器瓦と金属屋根のガルバリウム鋼板等になります。注意が必要なのはスレート、アスファルトシングル、金属屋根のトタン、セメント瓦です。
耐用年数、メンテナンスの頻度と費用などから順位をつけると次のようになります。
陶器瓦 > ガルバリウム鋼板等(金属) > スレート・アスファルトシングル・トタン(金属)・セメント瓦
屋根材ってかなり多くの種類があり、一概に順位をつけるのは難しく例外もあります。例えばスレートでも岩石を使ったようなものは耐用年数も長く、金属屋根やアスファルトシングル材も耐久性が高い新しい素材が開発されています。ここで説明するのは、中古住宅で使われることが多い素材についての、一般的なことだと考えてください。
また、中古住宅として、どの屋根材が一概にダメだというわけではありません。メンテナンスが必要な時期だったり、葺き替えが必要な場合でも、立地や建物の状態、そして価格も含めて総合的に良いとなれば、もちろん購入を検討する価値はあります。
スレート
主に化粧スレートと呼ばれます。セメントや繊維を固めて作った板状の屋根材になります。岩石を使った天然スレートもありますが、価格が高く、中古住宅ではほとんど使われていません。
化粧スレートのメリット
- 価格が安い
- 施工性が良い
化粧スレートのデメリット
- 板状なので割れやすい
- 水を吸いやすく、ざらざらしているので苔がはえたり、汚れが付着しやすい
- 定期的(15年くらい)な塗り替えなどのメンテナンスが必要
- 30年くらいで葺き替えが必要になることが多い
アスファルトシングル
ガラス繊維等の基材にアスファルトを浸透、コーティングして、表面に砂や石の粒で着色、装飾してできたシート状の屋根材です。もともとアメリカで開発された屋根材で、北米やヨーロッパ、そして日本でもよく使われています。日本の現在の新築住宅でも比較的よく使われている印象です。
メリット
- 価格が安い
- 施工性が良い
- 割れにくい
- 防水性は高いほう
- シート状なので柔軟性があり、様々な形の屋根に施工できる
- 軽いので建物の耐震性に良い影響
- すっきりしたデザインになる(好みがわかれる)
デメリット
- 劣化しやすく耐久性が低い
強風に弱いといわれることもあるようですが、台風の時に他の屋根材(瓦など)が飛ばされず、アスファルトシングルだけが飛ばされたなんてのはあまり聞いたことがありません。また、耐久性についても、高耐久のものが開発されており、昔よりは良くなっているようです。
デザイン性については好みがわかれるでしょう。すっきりした感じがおしゃれにも見えますが、重厚感や高級感はあまり感じられません。和風でも合うとは思いますが、どちらかというと洋風の住宅向けだと思います。アメリカ西海岸風の住宅とかには合いそうだと思います。
金属屋根
金属屋根は現在様々な種類のものがあります。中古住宅で見るのは基本的にトタン、ガルバリウム鋼板、銅板などです。
ガルバリウム鋼板は耐用年数も長く、メンテナンスもあまり必要ないようです。
トタンは鉄に亜鉛メッキしてできた素材なので、耐久性は低く、定期的な塗り替えも必要です。
銅板は、本格的な和風住宅などで使われることがある屋根材です。施工した時は銅色(新しい10円玉の色)で、年数が経つと緑色になってきます。耐久性が高く、和の良さがでる屋根材です。ただ、価格が高く、施工技術も必要なので、一般の住宅で使われることは少ないと思います。中古住宅でも本格的日本家屋などでは使われていることがあります。
そのほかにもガルバリウム鋼板より耐久性の高い素材や、ステンレス、アルミなども屋根材として使われていますが、中古住宅の屋根材として使われていることは少ないでしょう。
基本的には、金属屋根であればガルバリウム鋼板なのかトタンなのかを確認した方がよいでしょう。
陶器瓦
粘土を整形して、釉薬(うわぐすり・ゆうやく)を塗って焼き上げて作った瓦です。釉薬瓦とも呼ばれます。耐久性が高く、釉薬を塗って焼いているので表面にガラス質の層があり、防水性が高く汚れもつきにくいです。
日本家屋等に使われていいる湾曲のある和瓦や、洋風にも合う平板瓦、そして南フランスで使われているようなプロヴァンス風デザインのものもあります。
また、いぶし瓦も粘土から作られた瓦ですが、こちらは釉薬を使わず、焼き上げた後、ガスで燻すことで表面に炭素の膜が形成された瓦です。陶器瓦と比べると表面の光沢が少なく、しぶくて落ち着いた感じの印象です。瓦屋さんによると性能や耐久性は陶器瓦と変わらないようです。ただし、陶器瓦と比べて経年による見た目の変化はあるようです。
メリット
- 耐久性が高い。耐用年数は50年から半永久的
- 塗り替え等のメンテナンスが不要
- 防音性が高いある
- 見た目が美しく、重厚感がある
メンテナンスについては、塗り替えは必要ありませんが、瓦がずれた場合や、棟と瓦の間の詰め物などはメンテナンスが必要です。それでもメンテナンス費用はあまりかからない方です。
デメリット
- 価格が高い
- 重量があるので、耐震性に影響がある。
陶器瓦は重いので、屋根(建物の上部)が重いということになります。上が重いと耐震性に影響があるっていうのは、感覚でもなんとなくわかりますよね。ただ、瓦の重さを考えて家の構造をしっかり作っていれば、通常は問題ないと思います。気を付ける必要があるのは、軽いスレート瓦を陶器瓦に葺き替える場合などは、家の構造が陶器瓦の重量に耐えられるか、耐震性に問題がないか確認する必要があります。
セメント瓦
セメント瓦はセメントを固めてから塗装した屋根材です。形とかは陶器瓦と似ているんですが、耐久性やメンテナンス費用はかなり違います。最近の家ではあまり使わないと思いますが、30年以上前くらいの家では結構使われています。
陶器瓦と比べると耐久性はかなり低いでしょう。とは言っても40年くらいノーメンテナンスで使い続けている住宅は時々あります。そのかわり表面はボロボロで、塗装しても難しく、葺き替えが必要なんじゃないかと思われるケースがほとんどですが。
メリット
- 価格が安い
- 陶器瓦よりは軽い
デメリット
- 耐久性が低い
- メンテナンスが必要(一般的には20年くらいで塗り替え)
- 中古住宅の場合、葺き替えが必要な場合がある
屋根の形状
屋根の形状も確認しておくべきポイントです。理由はいくつかありますがここでは2つ挙げます。
- 雨漏りしやすい構造かどうか
- メンテナンスの費用がどれくらいかかるか
複雑な構造をしている場合、シンプルな形状の屋根に比べて雨漏りのリスクが高い場合があります。例えば、屋根が何重にも重なったような構造だったり、谷が多い構造などでは複雑な分、雨水が侵入してくる隙間などができやすい傾向があります。もちろん、プロがしっかり設計して、きちんとした施工をしていれば、問題ないケースの方が多いと思います。ただ、やはり形状も一つの判断材料となります。
また、屋根が複雑な形をしていると、塗り替えや葺き替えなどメンテナンスの費用がシンプルな形状の屋根より多くかかる傾向にあります。複雑な形をしているので、総面積が広くなったり、施工の手間がよりかかる場合が考えられます。
屋根の形状は確認しておくべきことですが、必ずしも複雑な屋根がダメだということではありません。複雑というのは、別の見方をすれば豪華だとか、手をかけて作っているという意味でもあります。デザインにこだわっているという言い方もできるでしょう。
大切なのは、豪華さやデザイン性だけでなく、実用性(雨漏りしやすいかどうか)、将来のメンテナンス費用も合わせて考える必要があるということです。
屋根の状態
屋根に問題があり、すぐに塗り替えや、葺き替えが必要な場合、通常であれば不動産会社から状況の説明があると思います。ただ、不動産会社やその担当者もそれぞれなので、ご自身で中古住宅を見る場合のポイントや知識を持っていることはよいことだと思います。
どんな屋根材でも、状態によってはメンテナンスが必要になる場合があります。もちろん、専門業者でなければ詳細なことはわからないでしょうが、少なくとも見える範囲で次のことを確認しましょう。
- スレート系、セメント瓦などは塗装が剥げていないかどうか
- スレート系、セメント瓦などが劣化してボロボロになっていないかどうか
- 誰が見てもわかるくらい古い印象になっていないか
- 瓦など屋根材ががずれているように見えないか
- 金属系は塗装が剥げていないか、錆びていないか
- 汚れが激しくないか
中古住宅を買う方の多くは屋根のプロではないので、上記のような目で見てわかることでも大丈夫です。そしてもし気になることがあれば、不動産会社に状況を確認しましょう。または、購入を決める前に、建設会社など専門の業者に調査を依頼し、必要であれば修理等の見積もりを取りましょう。中古住宅なので、完璧なものは少ないでしょうが、大きな問題がないかどうか確認する必要があります。
内部からの雨漏り確認
屋根材がなんであれ、屋根の形状がどんな形であれ、また外観上きれいでも、家の中で雨漏りしているのであれば屋根に問題がある可能性があります。当然ですよね。
確認のやり方は次の通りです。
- 不動産会社をとおして、持ち主、住人に現在雨漏りがないか確認する。
- 過去に雨漏りがなかったか確認する。
- 天井や天井に近い壁を見て、水など液体が染みた跡がないかを確認する。
雨漏りがあった場合、原因を突き止めて修理を行う必要があります。場合によっては屋根の問題ではなく、外壁から雨水が侵入している場合もあります。明らかに屋根に異状があればそこを修理すれば改善されることもありますが、雨水が通る道というか経路は、なかなかわかりづらい場合があります。その場合、専門業者に依頼して原因を突き止め、修理にどれくらいの費用がかかるのか確認する必要があります。
結果によっては中古住宅購入の判断のポイントになります。
まとめ
中古住宅の屋根について確認するポイント、必要な知識について解説しましたが、基本的には屋根に明らかな問題があるとわかっていれば、不動産会社から説明があると思います。
また、中古住宅なので屋根も新品ではなく、将来的なメンテナンスが必要になる可能性はあるでしょう。
このような前提があったとしても、ご自身で中古住宅に関して確認するべきことを理解しておくのは、リスクの低減になりますし、将来的にかかってくるメンテナンス費用を事前に把握するための助けになると思います。