住宅ローン減税の条件や手続きなどの解説と今後の動向

住宅ローン減税の条件や手続きなどの解説と今後の動向

住宅ローン減税は住宅ローンを組んで、家を買ったり、新築を建てたり、増改築等をした人に対する税制の優遇制度のことです。正式名称は「住宅借入金等特別控除」と言います。

現行の法律では、2025年末までに入居して、住宅として利用する場合に住宅ローン減税の対象となります。2026年以降については、政府から延長する方針が示されており、制度の変更も議論されています。

この記事では住宅ローン減税の基本的なしくみと、2026年の住宅ローン減税や現在の制度からの変更点などについて解説します。

この記事でわかること
  • 住宅ローン減税のしくみ
  • 住宅ローン減税の要件
  • 住宅ローン減税でどれくらい得するのか
  • 必要な手続き
  • 2026年の住宅ローン減税や現在の制度からの変更点

住宅ローン減税のしくみ

住宅ローン減税とは、住宅ローンを組んで、住宅を購入したり、新築を建てたり、増改築等をした人に対する税金の軽減です。住宅ローンは税額控除で、本来支払うべき税金が減らされるというお得な制度となっています。

お仕事をしている人は、給料から所得税や住民税を引かれますよね。住宅ローン減税が適用されれば、その引かれる税金を減らすことができます。

例えば50万円払うべき税金が20万円減税されて30万円しか払わなくていいといった感じです。実際には確定申告や年末調整で還付されます。

住宅ローン減税の金額より、払っている所得税の方が少ないという場合、引ききれない分は次の年の住民税から引くことができます。ただし、住民税から引くことができる上限は9万7500円です。

元々あまりにも払っている所得税が安いという場合は、そもそも住宅ローンが通らないでしょうけどね。

※減税の対象となるのは一定の要件を満たした新築、中古住宅になります。

新築・買取再販住宅

2024年・2025年入居の場合、新築・買取再販住宅については、13年間に渡って毎年末時点の住宅ローン残高の0.7%に相当する金額を、本来支払う税金の金額から減らすことができます。控除率0.7%。

住宅の環境性能等借入限度額控除期間
長期優良住宅・低炭素住宅子育て世帯・若者夫婦世帯:5,000万円
その他の世帯:4,500万円
13年間
ZEH水準省エネ住宅子育て世帯・若者夫婦世帯:4,500万円
その他の世帯:3,500万円
省エネ基準適合住宅子育て世帯・若者夫婦世帯:4,000万円
その他の世帯:3,000万円
その他の住宅対象外

住宅の環境性能と子育て世帯・若者夫婦世帯かどうかで限度額が違います。

子育て世帯・若者夫婦世帯とは

次のどちらかの世帯

  • 19歳未満の扶養家族を有する者
  • 年齢40歳未満であって配偶者を有する者、もしくは年齢40歳以上で年齢40歳未満の配偶者を有する者

年齢は入居した年の12月31日時点で判断します。

買取再販住宅とは、不動産事業者が中古住宅を買い取り、増改築等をして販売した居住用住宅のことです。住宅ローン減税の対象となるためには、法律で規定された内容の増改築等をする必要があります。

それぞれの住宅の環境性能について説明します。

「長期優良住宅・低炭素住宅」

規定された基準をクリアして認定を受けた住宅

「ZEH水準省エネ住宅」

日本住宅性能表示基準での断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上の性能を持つ住宅

「省エネ基準適合住宅」

日本住宅性能表示基準での断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上の性能もつ住宅

「その他の住宅」

「省エネ基準適合住宅」の省エネ基準を満たさない住宅

2024年以降に建築確認を受けた、「その他の住宅」は住宅ローン減税を受けることができません。

2023年末までに建築確認を受けた「その他の住宅」に、2024年または2025年に入居する場合は住宅ローン減税の対象となります。借入限度額は2,000万円、控除期間は10年となります。

中古住宅

2024年・2025年入居の場合、中古住宅の場合は10年間に渡って毎年末時点の住宅ローン残高の0.7%に相当する金額を、本来支払う税金の金額から減らすことができます。控除率0.7%。

住宅の環境性能等借入限度額控除期間
長期優良住宅・低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅3,000万円10年間
その他の住宅2,000万円

中古住宅でその他の住宅の場合、住宅ローン減税を受けるためには、築年数など法律の要件を満たす必要があります。

住宅ローン減税の要件

共通の要件

  • 主に居住の用に供する家屋であること。メインが住宅。
  • 家屋の床面積が50㎡以上あること。
  • 住宅ローン減税を受ける人の収入要件。合計所得金額が2,000万円いかであること。
    ※床面積と収入要件に関しては、合計所得金額が1,000万円以下である年は家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満(建築確認の期限は2025年12月31日)でも対象となる。住宅ローン控除適用期間中に合計所得が1,000万円を超えた場合は対象にならない。
  • 住宅の引渡しまたは工事完了から6ヵ月以内に入居すること。
  • 店舗併用住宅の場合は床面積の50%以上が居住用であること。
  • 返済期間が10年以上の住宅ローンを組んでいること。

中古住宅の要件

  • 建築年が1982年1月1日以降の住宅であること。和暦では昭和57年1月1日。
  • 建築年が1982年1月1日以前である場合は、地震に対する安全性が証明できる家屋。
地震に対する安全性の証明手段
  • 耐震基準適合証明書
    ※家屋を取得した日前2年以内に家屋の調査が終了したものに限る
  • 建設住宅性能評価書の写し
    ※家屋を取得した日前2年以内に評価されたもので、耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)の評価が等級1、等級2、または等級3であるものに限る
  • 既存住宅売買瑕疵保険付保証明書
    ※家屋を取得した日前2年以内に保険契約を締結したものに限る

建築年が1982年1月1日以前の家屋の場合、実際には耐震診断をして、必要であれば耐震補強を行い、上記どれかの証明書を取る必要があります。場合によっては住宅ローン減税で受けることのできる金額メリット以上のお金がかかる可能性もあります。

耐震診断や耐震補強をすれば、金額的なメリットはケースバイケースですが、安全性は向上するという事実はあります。

買取再販住宅の要件

  • 宅地建物取引業者により、一定の増改築等工事が行われた住宅であること。増改築等工事には要件があり、該当することを「増改築等工事証明書」により証明された住宅であること。
  • 宅地建物取引業者から住宅を取得したこと。
    わかりやすく言うと、宅地建物取引業者が売主である物件を買ったということ。
  • 宅地建物取引業者が住宅を取得してから、リフォーム工事を行い、再販売するまでの期間が2年以内であること。
  • 取得の時、住宅が新築された日から10年を経過していること。

増改築等工事に関する要件や「増改築等工事証明書」など、その他の詳細については国土交通省のウェブサイトをご確認ください。

「住宅ローン減税」 国土交通省ウェブサイト

増改築等をした場合の要件

実施した増改築等工事が規定の要件を満たす必要があります。規定の増改築等工事を実施したことを証明するため、「増改築等工事証明書」が必要になります。また、増改築等工事の費用が100万円を超えることも条件となります。

「増改築等工事証明書」の様式は買取再販住宅の場合と異なります。

増改築等工事や「増改築等工事証明書」の詳細については、買取再販住宅で紹介した国土交通省のウェブサイトをご確認ください。

住宅ローン減税でどれくらい得するのか

住宅ローン減税でどれくらい得するのか、借入額2,000万円(中古住宅)の場合と4,800万円(新築)の場合でシミュレーションしてみます。

シミュレーションの条件は次の通りです。

  • 住宅ローン金利1%で変動しないと仮定
  • ボーナス返済なし
  • 元利均等返済
  • 繰り上げ返済はしないものとする
  • 返済開始月 2025年12月
  • 控除対象となる配偶者、扶養親族(16歳以上):1人
  • 子育て世帯・若者夫婦世帯
  • 物件所在地は福岡県

控除率と期間は、中古住宅等の場合は0.7%を10年間、新築の場合は0.7%を13年間になります。

※シミュレーションは簡易的なものなので、実際の金額とは差が出る可能性があります。
※シミュレーションは特定条件に基づいて計算した参考数値であり、実際の控除金額を保証するものではありません。

借入金額2,000万円の場合

中古住宅で借入金額2,000万円の場合のシミュレーションです。年収は600万円、住宅ローン借入期間は30年とします。建物の性能は一般住宅とします。

住宅ローン年末残高控除額
2025年19,952,339円139,600円
2026年19,377,299円135,600円
2027年18,796,484円131,500円
2028年18,209,834円127,400円
2029年17,617,289円123,300円
2030年17,018,794円119,100円
2031年16,414,286円114,900円
2032年15,803,705円110,600円
2033年15,186,990円106,300円
2034年14,564,079円101,900円
10年間の合計控除額1,210,200円

10年間の減税額は約121万円になります。

借入金額4,800万円の場合

新築住宅で借入金額4,800万円の場合のシミュレーションです。年収は800万円、住宅ローン借入期間は35年とします。建物の性能は長期優良住宅とします。

住宅ローン年末残高控除額
2025年47,904,503円335,300円
2026年46,752,307円327,200円
2027年45,588,535円319,100円
2028年44,413,072円310,800円
2029年43,225,800円302,500円
2030年42,026,601円294,100円
2031年40,815,355円285,700円
2032年39,591,942円277,100円
2033年38,356,236円268,400円
2034年37,108,118円259,700円
2035年35,847,461円250,900円
2036年34,574,140円242,000円
2037年33,288,025円233,000円
13年間の合計控除額3,705,800円

13年間の減税額は約370万円になります。住宅ローンの金額が大きくなると、減税効果もかなり大きくなります。

必要な手続き

住宅ローン減税を受けるためには、入居の翌年の確定申告で、住宅ローン減税を受けるための手続きが必要です。確定申告での手続き後、1~2ヶ月で還付金として減税額が申請した金融機関の口座に振り込まれます。

2025年に引渡しを受けて入居した場合は、2026年に確定申告を行います。

年末調整の対象者、いわゆる会社員は2年目からは確定申告の必要はありません。2年目からは年末調整で住宅ローン減税を受けることができます。

年末調整の場合、勤務先に必要書類を提出することで、2年目以降も引き続き住宅ローン減税を受けることができます。

年末調整に必要な書類

(1) 給与所得者の住宅借入金等特別控除申請書兼住宅借入金等当区別控除計算明細書

(2) 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書

(1)に関しては1年目の確定申告後に税務署から送られてきます。

(2)に関しては毎年10月から12月頃に、住宅ローンを借りた金融機関から送られてきます。

個人事業主や年収2,000万円以上の会社員は、2年目以降も毎年確定申告をする必要があります。

住宅ローン減税の確定申告に必要な書類は、国税庁のウェブサイトをご確認ください。

「マイホームを持ったとき」 確定申告に必要な書類 | 国税庁ウェブサイト

2026年以降の住宅ローン減税(予定)

現在の制度では、住宅ローン減税は2025年12月末までに入居する場合に適用されます。2026年以降、住宅ローン減税はどうなるのでしょうか。

2026年からの住宅ローン減税について、2025年11月時点でわかっていることを伝えます。

2025年以降の住宅ローン減税
  • 現時点で公式な発表はない
  • 2026年以降も住宅ローン減税を延長して実施する可能性が高い
  • 面積要件を緩和(原則50㎡以上から40㎡以上に変更)
  • 対象となる住宅ローンの限度額や控除率は現行を維持する方針

2025年11月時点では、与党が住宅ローン減税の延長、見直しについて議論を進めていることが報じられています。

正確なことがはっきりするのは、12月に与党がまとめた税制改正大綱が発表されてからになりますが、2026年以降も引き続き住宅ローン減税を実施すると見られています。

新しい情報が出たら、本記事でも伝えたいと思います。

まとめ

住宅ローン減税は、住宅取得の時に大きなメリットがある制度であります。もし同じくらいの条件であれば、住宅ローン減税の対象となる住宅の方が良いですよね。

本記事では住宅ローン減税について詳しく説明しましたが、一般の方にとってはかなり複雑だと感じるかもしれません。不動産会社や建設会社に確認が必要ですが、新築についてはほとんどが住宅ローン減税の対象になると思います。

中古住宅については不動産会社に対象になるかどうかを確認していただければわかると思いますが、本記事を読んでいただければ、築年数などからある程度判断がつくと思います。

中古住宅の場合は特に、住宅ローン減税の対象になるかどうかというのは確認すべきポイントかもしれません。もちろん、住宅ローン減税以外にも判断基準はたくさんあります。住宅ローン減税の対象であるかどうかだけで判断はできませんが、対象になれば住宅ローンの金額よっては100万円単位のメリットが出る可能性があります。

住宅ローン減税の理解について、本記事が皆さんの役に立てばうれしいと思います。

お気軽にお電話ください!
tel:0947-85-9710
株式会社 石橋不動産