不動産の売買を行う場合、契約当事者は2つの契約を取り交わします。それは売買契約と媒介契約です。売買契約と媒介契約はそれぞれ別の目的があり、不動産取引において重要な意味を持ちます。
多くの方が、不動産売買の際に契約を交わすということはご存知だと思います。一方で、必要な契約は2つあり、それがどんな契約で、どういった意味を持つのかということは意外と知られていません。
契約書に署名・捺印することで、あなたに権利と義務の両方が発生します。
したがって、契約書に何が書かれているのか、どういった意味があるのかわからずに契約するのは不安ですよね。そして実際に、内容を理解せずに契約を交わすのは非常に危険ですし、絶対にそのようなことをしてはいけません。
契約をした後では、簡単に解除することはできません。場合によっては違約金や大きな義務を負わされる可能性もあります。実際の取引の際には、署名・捺印する前に内容をよく確認し、わからないことは不動産会社や専門家にきちんと確認し、納得してから契約を交わすことが大切です。
安全な取引のために、まずは売買契約や媒介契約の意味や役割、いつ交わすのかなどの大枠を理解して取引にのぞむことが必要です。大枠を理解すれば、冷静に行動することができますし、わからないことはきちんと調べて判断するという当たり前のことも落ち着いて行うことができます。
今回は不動産取引において取り交わされる、2つの契約について、その違いや意味をくわしく説明させていただきます。
これから不動産の売買を行う予定の方は、ご一読いただきスムーズな売買に役立てていただきたいと思います。
売買契約
しくみと成り立ち
不動産の売買契約は、不動産の売主(A)と、不動産の買主(B)が結ぶ契約です。
売主(A)が自分の不動産を売り、買主(B)が買うという契約です。
一般の方が不動産の契約と聞いて思い浮かべるのは、この売買契約でしょう。
売買契約の詳細
契約の内容
売買契約は、その名のとおり物(今回は不動産)の売り買いの契約(合意)です。売主と買主が取引の条件に合意したら、その内容を書面(契約書)にして売買契約を締結します。
売買契約書には合意した取引の条件(価格や引渡し時期など)の他、約款で双方の権利・義務について定めます。また、特約等がある場合も記載します。
何を、誰が誰に、いつ、いくらでということや、不動産独特の様々な必要事項が契約で定められます。
売買契約書に記載する主な項目を挙げます。
- 売買物件の表示
- 売買代金
- 支払時期
- 土地の測量に関する項目
- 融資利用に関する項目
- 瑕疵担保責任の有無
- 建物状況調査に関する項目
- その他約定事項
- 特約など
売買契約を締結するのはいつ?
買主は購入したい物件が見つかったら、購入申込を行います。申込を行うときには、希望の購入金額や引渡し時期などの希望条件も一緒に伝えます。
希望条件に双方が合意できない時は、仲介業者(不動産業者)が条件調整を行います。
双方が条件に合意すれば売買契約を締結します。
媒介契約
しくみと成り立ち
媒介契約とは、不動産業者に不動産の購入や売却の仲介業務を依頼する契約です。
わかりやすく言うと、不動産の売却、購入という専門的なことを依頼する、業務委託契約のようなものです。業務の内容や報酬、業務の経過報告の頻度などさまざまなことを記載します。
契約主体(契約を結ぶ当事者)は不動産業者と売主または買主です。不動産業者が不動産の売主(A)、そして不動産の買主(B)とそれぞれ契約を結びます。
媒介契約の詳細
契約の内容
媒介契約は、不動産業者と売主、買主がそれぞれ締結するもので、不動産業者が行う業務や報酬について定めます。
媒介契約の中では仲介手数料に関する取り決めや、契約が解除になった場合の仲介手数料に関するあつかいについても定めています。この契約に基づいて、不動産業者は業務を行い、売主や買主は報酬を支払うのです。
媒介契約書に記載される主な項目には次のようなものがあります。
- 媒介契約の種類(専属専任媒介契約・専任媒介契約・一般媒介契約)
- 売買物件の表示
- 仲介業務の内容と義務
- 指定流通機構への登録に関すること
- 契約の有効期間
- 売買価額(媒介価額)
- 報酬(仲介手数料)
不動産の売却を依頼するときだけでなく、購入する場合にも不動産業者と媒介契約を締結する必要があります。
不動産の購入の媒介契約書は、購入者が支払う仲介手数料について定めるという意味合いが大きいです。
媒介契約の書式には国土交通省が定め、推奨している『標準媒介契約約款』があります。ほかにも各不動産会社が独自に作っているものもあります。不利な契約を結んでしまわないためにも、国土交通省の『標準媒介契約約款』を用いた媒介契約書の利用をおすすめします。
媒介契約はいつ交わす?
媒介契約は不動産の仲介業務を正式に依頼するときに交わすというのが原則です。
不動産の売却を依頼するときは、不動産業者に売却の相談を行い、売却価額や時期、売却条件などを決定したあとに、売却希望者は依頼する不動産会社を決めます。そして媒介契約を締結して仲介業務を正式に依頼します。
購入の場合も、不動産業者に希望の物件探しを依頼した時点で媒介契約を交わすべきです。しかし、物件探しを始めた段階で不動産業者と契約を締結するという意識はほとんどの方が持っていませんし、現実的ではありません。
また、買主は様々な不動産業者や情報にアクセスして物件探しを行うため、始めの段階で媒介契約によって行動が縛られるのは買主の利益にはならず、不適切です。
そこで現状ではほとんどの場合、購入物件を決め、重要事項説明を受けたり、売買契約書を締結する段階になって買主と不動産業者は媒介契約を交わしています。
まとめ
売買契約と媒介契約は、内容や役割の違いの他、売主と買主が結ぶ契約なのか、不動産業者と売主または買主が結ぶ契約なのかという違いがあります。
この違いを事前に理解することで、不動産取引における権利と義務を正しく把握し、より安心して取引にのぞむことができると思います。
不動産は大切な資産であり、売る場合も、買う場合も正しい知識を持って契約を行う必要があります。よくわからないけど、”言われた通りに署名・捺印した”というのでは、あとでトラブルになったり、損や被害を被る可能性があります。
もちろん、信頼できる不動産業者に依頼して任せることも大切ですが、ご自身で今なにが行われているのかということを、理解して取引を進めることも大切です。
契約を行う際は内容をしっかりと理解し、不明な点があればそのままにせず、不動産業者や契約の相手方にきちんと確認しましょう。
契約という行為では、権利を得るとともに、義務も発生します。あとでこんなつもりではなかったと後悔しないためにも、理解し、納得してから契約を結ぶことが必要です。
不動産売買の大きな流れや必要な手続きの概要を把握することで、冷静に取引にのぞむことができ、不利な契約を結んでしまったり、だまされたりするリスクを大きく減らすことができます。
今回の記事が不動産売買の契約について、理解を深めるお役に立てば幸いです。