不動産売買契約書の書き方、見方や注意点を実際の契約書見本でくわしく解説

売買契約書に印鑑を押す画像

不動産売買契約書の見方や注意点をしっかりと理解しておくことはとても大切です。

契約というのは、契約を交わすあなたの権利や義務を定めるものです。不動産の場合は、金額も大きく、取引するものも土地や建物などの大切な資産です。そんな金額の大きな資産の取引についてあなたの権利や義務を定めるのが不動産売買契約です。

もしあなたに不利なことや、将来に渡って過剰な責任を負うような条項や取り決めが契約に入っていたらどうなるでしょうか。とても不安ですよね。そして実際に不利な契約を結んでしまい、あとでものすごい後悔をした人が多くいます。不動産売買の取引金額は一般的に高額です。つまりなにかあったときの金銭的負担や責任も大きくなる可能性が高いのです。

だからといって不動産の売却や購入を一生行わないというのは、あなたの人生にとって大きな不利益となる可能性があります。人はさまざまな事情で不動産の売却や購入が必要になるという時があります。

相続した不動産や今後不要な不動産を売却して現金に変えたい、結婚して家族が増えたので広い家や土地が欲しい、土地やアパートを購入して不動産投資で資産形成をしたいなど、さまざまな目的を達成するために不動産売買を行う必要にせまられることがあります。

そうした場面で、自分に不利な条件や過剰な責任を負わされることなく、不動産売買契約を交わすためには事前に正しい知識が必要です。

この記事では不動産売買契約書には何が書かれているのか、そしてそれは何を意味しているのか、どんなことに注意したらいいのかということを、一般の方にもわかりやすく解説していきます。

スポンサーリンク

不動産売買契約とは

不動産売買契約書を交わす(締結)することで、あなたにどんな効用を発生させるのでしょうか。ここでは、売買契約書の意味や目的について見ていきます。

売買契約が成立するのはいつなのか

民法では契約当事者の口頭による合意だけで売買契約は成立すると定められていますが、不動産の場合、実際に売買契約が成立し、効力が発生するのは、契約当事者(売主と買主など)が契約書に署名・捺印を行った時点と考えるべきでしょう。

つまり当事者双方が署名・捺印をして契約書を取り交わすまでは、まだ契約は成立していないということです。

確かに民法では、売買契約は契約当事者間の口頭による合意だけで成立すると定められています(諾成契約)。また、必ずしも書面等(契約書)の作成も必要ではありません。

例えば民法上は、売主:「1,000万円で売ります」、買主:「1,000万円で買います」、これで契約が成立するのです。

ただし不動産の売買契約の場合は、様々な決め事や協議するべきことがたくさんあります。例を挙げると、

  • 引渡しの日
  • 代金の支払い日
  • どのような状態で引き渡すのか
  • 公租公課の負担はどうするのか
  • ローン特約はどうするのか
  • 瑕疵担保責任はどうするのか
  • その他

こうしたことを協議して、条件を詰めていかないといけません。だから現実的には「売ります」「買います」だけで契約が成立すると考えるのは無理があります。

また、口頭で合意してもなんの証拠も残らないので、あとで当事者の一方から「言っていない」と言われればどうしようもなく、現実的ではありません。これは不動産以外の売買にも言えることですが。

さらに、不動産業者が仲介する不動産の売買契約は、宅建業法37条の書面交付義務があり、通常は必要事項を記載した売買契約書に宅地建物取引士が記名・押印することで37条書面交付義務に替えています。

このように様々な側面から考えても、売買契約が成立するのは、契約書を作成して、当事者が署名・捺印した時点と考えるべきでしょう。

売買契約書の意味と目的

売買契約書を交わす目的は、「契約当事者の権利義務の明確化」と「証拠の確保」です。

権利義務の明確化

契約書を作成し、売主・買主がどのような権利を得るのか、また義務を負うのかを明確にします。双方の権利・義務を明確化することでトラブルや紛争を防止するのが目的です。

権利・義務に合意し、それを明確化した契約書で双方が同意・確認すれば、あとは双方が義務を果たしていくだけです。

例えば、一般的に売主・買主の権利・義務には次のようがものがあります。

  • 売主の権利:売買代金を受け取る。
  • 売主の義務:売買目的物(不動産)を約束した状態で引き渡す。
  • 買主の権利:売買目的物(不動産)を約束した状態で受け取る。
  • 買主の義務:売買代金を支払う。

このように、契約当事者双方がやるべきこと、やってもらうべきことを明確化することで、トラブルや紛争を防ぐ効果が期待できます。

証拠の確保

売買契約書は紛争が発生し、裁判になったときの「証拠」となります。契約書があれば内容を裁判で立証することができますので、裁判上の有効な証拠となります。

いくら口頭で合意していても、契約書に記載したものでなければ、裁判所で認めてもらえない可能性が高いです。契約書に記載する一般的な事項以外にも、合意・約束等がある場合は特約として契約書に記載すべきです。

例えば中古住宅等の売買で、敷地内にある古い倉庫を引渡しまでに売主が撤去するという約束があるならば、特約として契約書に記載すべきです。もし契約書に記載せず、仮に売主が約束を果たしてもらえなかった場合、裁判等ではそういった約束があったことは認められない可能性が高いです。

紛争や裁判は誰でも避けたいと思います。しかし、万一そうなったときのための証拠として契約書に合意・約束等はきちんと記載すべきです。契約書は紛争や裁判上、有効な証拠として機能します。

スポンサーリンク

実際の契約書を使った書き方、見方と注意点の解説

ここでは、実際に使われている売買契約書の見本を使って、契約書に記載されている内容や注意点を解説していきます。

今回説明に使わせていただく契約書は、福岡県宅地建物取引業協会の土地実測・建物公簿売買用の売買契約書です。地域や不動産会社によって契約書の書式や内容や形式は少しずつ変わってくることもありますので、その際は対象になる項目をご参考にしていただければと思います。

公簿売買と実測売買
売買する不動産の面積についての扱いは2通りあります。
公簿売買:全部事項証明書(登記簿謄本)に記載された公簿面積で取引を行います。もし契約後に実測を行い、登記簿と面積の差異がでても売買金額を変更しません。
実測売買:1㎡当たりの単価を確定し、売買契約時にはいったん全部事項証明書に記載された公簿面積で売買金額を決めておいて、引き渡しまでの間に測量を行い、公簿面積と実測面積に差異があれば売買金額を調整して精算を行います。

公簿売買は一般的に田・畑などの農地や山林などで、面積が大きすぎる割に土地単価が低くて測量費をかける意味が現実的に薄い場合などに採用されます。また、国土調査や確定測量がすでに行われていて、公簿面積と実測面積に差がないことが明らかな場合なども公簿売買で問題ありません。

売買契約書の見方と注意点

(1)売買の目的物の表示に関する項目

土地に関する欄
土地に関する契約書欄

売買契約の対象として、所有権移転を行う土地を特定するための欄です。登記簿(全部事項証明書:法務局で取得可)の表題部に記載されたとおりの「所在」「地番」「地目」「地積」を記載します。地域によって「地番」と住所が異なる場合も多いので注意してください。

1つの地番の土地のうち、一部のみを売買の対象とする場合は、売買の対象となる部分を明らかにした図面を契約書に添付して特定します。可能であれば正式に分筆して取引を行う方が望ましいです。

売買対象の土地が1筆(1つ)だけでない場合は、すべての土地を記載してください。「他○○筆」などとしてはいけません。1つ1つ正確に「所在」、「地番」、「地目」、「地積」を記載してください。契約書の欄に全ての土地を記載できない場合は、一番下の欄に「別紙のとおり」と記入し、別紙に記載してください。また、別紙は必ず契約書と一緒にとじてください。

補足
セットバック等がある場合は、念のため備考に記載します。
測量図に関する欄
測量図に関する契約書欄

測量を行う、または測量図がある場合はそれがどういう測量図なのかを記載します。

土地の実測売買の場合は通常、引き渡しまでに確定測量を行い、確定測量図を作成します。

確定測量図とは、対象の土地に隣接するすべての土地の所有者に立ち会いのもと境界を確認し、境界が確定された図面です。官有地(道路等)と接する場合は、官民査定手続き(役所等の立ち合いで正式に確認)を行います。

現況測量図とは、確定測量図以外の図面で、具体的には隣接地所有者との立ち合い・境界の合意を経ていない、現況を測った測量図です。

地積測量図とは、土地の分筆登記等の申請を行う際に、申請書に添付して登記所(法務局)に提出する図面です。登記所に保管されており、だれでも入手することができます。

建物に関する欄
建物に関する契約書欄

土地と同じく、登記簿(全部事項証明書)の表題部に記載された内容を正確に記載します。記載するのは「所在」、「家屋番号」、「種類」、「構造」、「床面積」です。

もし建物の現況が登記簿記載の内容と違う場合は、備考に状況を詳しく記載します。例えば未登記の建物が存在していたり、増改築を行っている場合などです。

備考に記載する場合は、以下の書類等を参照してできるだけ詳細に記載するとともに、書類等を契約書や重要事項説明書と一緒にとじたり、参考書類として写しを買主に提出するのが望ましいです。

  • 建築確認通知書
  • 建築設計図書
  • 固定資産評価証明書
  • 家屋補充台帳
  • 正確な間取図等(設計士に依頼)
  • その他現況のわかる資料

(2)売買代金、手付金の額及び支払日に関する項目

売買代金、手付金の額及び支払日に関する契約書欄

売買代金の総額、土地代金、建物代金、手付金を記入します。残代金は売買代金の総額から手付金を差し引いた額を記載します。

手付金は通常5%から20%くらいの間で、当事者の合意を持って決めます。宅建業者が売主となる場合、受領できる手付金の上限が、売買代金の20%以内と定められています(宅建業法)。

残代金の支払い時期は、余裕を持って記入しておきましょう。また、基本的に支払い時期は「所有権移転・引渡し・登記手続きの日」と同じ日にするべきです。別々の日を定めることもできますが、トラブルや一方の当事者に大きな不利益や損害が生じる可能性があります。

例えば、代金を先に支払ったのに所有権移転の登記を受けれないなどの可能性があります。また、所有権移転の登記と引渡しを行ったのに代金の支払いをしてもらえないなども考えられます。

こういった可能性を排除するためにも、「代金の支払いの日」と「所有権移転・引渡し・登記手続きの日」は同じにしておくべきです。

(3)土地の実測、土地代金の精算の単価に関する項目

土地の実測、土地代金の精算の単価に関する契約書欄

土地に関して実測売買を行うときは、契約書に上図のような項目を入れて、実測精算の対象範囲と、代金精算の単価をあらかじめ決めて契約を交わします。公簿売買の契約ではこの項目は必要ありません。

実測精算の対象となる土地の面積を記入します。例えば「○○番△△」(登記簿面積180㎡)という1筆の土地売買で、全てを実測精算の対象とする場合は「私道負担のない場合」に180㎡と記載します。(通常はこちらです。)

売買対象土地に私道負担部分がある場合など、その部分を実測精算の対象から外すして、有効宅地部分だけを対象にしたいというような場合もあります。その時は上図のように「私道負担のある場合、それを除く有効宅地部分」の方に私道部分を除く、実測精算の対象とする有効宅地面積を記載します。

この場合は、私道部分に関しては測量後、登記簿面積と差異があっても実測精算は行わないということになります。

(4)その他約定事項、融資利用に関する項目

その他約定事項に関する欄
その他約定事項に関する契約書欄

「所有権移転・引渡し・登記手続きの日」は、土地や建物など売買対象の不動産の所有権移転登記を行い、不動産を引渡す日です。通常、代金の支払い時期と同じ日にします。理由は先ほど述べたように、トラブルや一方の当事者が不利益や損害を受ける事態を避けるためです。

「公租・公課分担の起算日」不動産売買契約書でいう公租・公課とは固定資産税と都市計画税等の土地建物にかかる税金のことです。固定資産税・都市計画税はその年の1月1日時点の所有者(登記名義人)に対して、1年分が課税されます。

通常売買は固定資産税等の起算日に引渡しが行われるというわけではないので、所有権が移転して引き渡しが行われた日以降の税金は買主が払って、その前日までの分は売主が負担するという考えが一般的です。

ここでまたややこしいのですが(笑)、お互いの負担分を計算するための、固定資産税等の起算日はいつなのかということが問題になります。そこであらかじめ税金の起算日を契約書に記載して決めておくのです。通常は1月1日起算、もしくは4月1日起算のどちらかです。ここは地域によって変わるようです。私が取引を行うときは4月1日起算を採用しています。

「手付解除の期限」不動産売買における手付金は通常、解約手付です。手付金は契約時に買主から売主に支払われます。解約手付の意味は、”買主が支払った手付金を放棄することで契約を解除できる”ということと、”売主が受領した手付金の倍額を買主に支払うことで契約が解除できる”ということです。

民法では手付解除ができる期限は、”契約の相手方が契約の履行に着手するまでの間”とされています。だだし、この履行に着手した時点がいつなのかというのは、客観的になかなかわかりにくいのです。実際に履行の着手がいつなのかということで多くの裁判が起こっています。

そこで、こういった契約の不安定な状態に区切りを決めましょう、というのが手付解除の期限です。この期限を過ぎると、手付解約ができなくなります。具体的に言うと、違約金を支払わないと契約解除できないということです。

注意
売主が宅建業者の場合は、民法の規定よりも短い手付解除の期限を定めることはできません(宅建業法)。つまり手付解除の期限を短く定めても、契約の履行に着手するまでは手付解除ができます。あくまでも宅建業者が売主の場合なので、一般の方が売主の場合はお互いの合意で手付解除の期限を定めることができます。

「違約金の額」契約の相手方の契約違反によって契約を解除するとき、違反をされた側は損害があれば、契約解除とともに損害賠償請求ができます。ただし、通常は損害賠償をする場合(裁判含む)、損害額を証明する必要があります。これが実は結構大変です。様々な根拠を出して、損害額を計算しないといけません。しかも客観的に認められる方法で。

そこで不動産の売買契約ではあらかじめ損害賠償の予定額(違約金)を定めて、契約書に記載するのが一般的です。通常は売買代金の20%くらいが多いです。また、宅建業者が売主の場合は、この額が20%を超えてはいけません(宅建業法)

融資利用の場合に関する欄
融資利用に関する場合の契約書欄

住宅ローン等の融資を利用して不動産を購入する場合、「ローン特約」、「ローン条項」といわれる特約を契約にいれるのが一般的です。

契約後に万が一、ローンの審査に通らなかった場合、代金が払えなくなります。そういった事態をふせぐために、金融機関から融資を受けることができなかった場合は、契約を解除できるという特約です。しかも支払済みの手付金も返金されます。融資を利用して不動産を購入する場合は、必ず入れておくべき特約です。

ローン特約をつける場合は上図のように、「融資申し込み先」、「融資承認予定日」、「融資金額」、「融資未承認の場合の契約解除期限」、「融資利用に必要な書類の最終提出期限」を記載します。

ここで決めた期限を過ぎると、ローン特約による解除ができなくなるので、期日は現実的で無理のない範囲で決定する必要があります。期限を過ぎた場合、手付解除、もしくは違約金を支払っての解除となります。

また、ローン特約には「A:解除条件型」と「B:解除権留保型」の2つの種類があります。Aの場合、期日までにローンの承認が降りない場合は自動的に契約解除になりますが、Bの場合は期限までに解除の意思表示(基本書面で)を売主に通知する必要があります。この通知を忘れて、期限が過ぎたらローン特約は使えないので要注意です。特に理由がなければ、はじめからA:解除条件型を選択するのが無難です。

注意
申し込んでいる金融機関で融資の承認が得られなかったが、別の金融機関であれば承認が降りるかもしれない。でもローン特約の期限には間に合わない。

こういった場合は、当初のローン契約の期限内に、売主にローン特約の期限の延長を申し入れてみましょう。売主の了解が得られればローン特約の期限を延長できる可能性があります。また、売主と期限の延長等で合意した場合は、必ず書面で住宅ローン特約の変更合意書を作成し、双方が署名・捺印しておきましょう。

(5)瑕疵担保責任、建物状況調査等に関する項目

瑕疵担保責任、建物状況調査等に関する契約書欄

売買を行う建物などに「瑕疵」があった場合、どれくらいの期間売主が責任を負うのかということを定める欄です。「瑕疵」とは欠陥です。例えば、引渡し前にあったシロアリ被害や雨漏りなどで、その時はわからなかったが、引渡し後に判明した場合などが「瑕疵」にあたります。

瑕疵に関する事項が契約書にない場合でも、売主に瑕疵担保責任はあります。民法で売主が負う責任と規定されているからです。瑕疵担保責任を負う期間を定めることで、民法の規定より瑕疵担保責任が短くなる場合がほとんどです。どれくらいの期間にするかは、一般的な慣習や様々な事情を勘案して、売主と買主との合意によって決めます。

注意
宅建業者が売主の場合、瑕疵担保責任を負う期間を2年より短くすることはできません。宅建業法第40条。

(6)署名・捺印

署名捺印の欄

契約書の内容をきちんと理解し、双方が合意すれば売主は(1)の欄に、買主は(2)の欄に、住所を記載し、署名・捺印を行います。

宅建業者が仲介を行う場合は、(3)の欄に業者の欄に必要事項を記載して押印を行います。また、(4)の欄には宅地建物取引氏が記名・押印を行います。

媒介業者の欄が2つあるのは、複数の宅建業者が取引に関与した場合のためです。売主側の業者、買主側の業者がそれぞれ別の場合などです。

約款および特約について

不動産の売買契約書には通常、約款と特約があります。約款は定形的に売買に関する詳細な決まり事を定めたものです。ときどき目にするかもしれませんが、さまざまな契約書に付属している小さな字でかかれた書類です。

特約に関しては、それぞれの取引特有の合意事項や決まり事です。例えば、売主は引渡しまでに庭の倉庫を撤去するなどの約束事を特約の欄に記載します。

約款、特約についてもきちんと理解して契約を交わしましょう。約款、特約についてはまた別の記事でくわしく説明させていただきます。

スポンサーリンク

まとめ

不動産売買契約書の見方や注意点について説明させていただきました。実際にはここで書いたこと以外にも注意すべき点や、個々の売買の事情によってはさらに詳しくご説明した方がよいこともあります。しかし、本記事を読んでいただくことで、不動産売買契約書の概要や一般的な取引で気を付ける点などをご理解いただけると思います。

また、実際の売買契約を交わす際の免疫のようなものもできるのではないかと思っています。

本記事が、これから売買契約を行う方のお役にたてば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

シェアお願いいたします!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です